アンジャッシュ渡部をみんなで食べ放題、不倫はなぜ笑いよりウケるのか |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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アンジャッシュ渡部をみんなで食べ放題、不倫はなぜ笑いよりウケるのか

不倫芸能人をみんなでいじってストレス発散!?

■「不倫は文化」ではなく、「不倫報道は文化」

 とまあ、こうした楽しみ方も見つけられるのだから、不倫はすごい。やはり、ひとつの「文化」なのだろう。
 そういえば「不倫は文化」発言で知られる石田純一も、渡部についてこんなコメントをした。
「彼はいい人だから、やっぱり僕は頑張ってほしい。いきさつはわからないけど」(『斉藤一美 ニュースワイドSAKIDORI!』文化放送)
 いきさつがわからなくても応援できるという、無防備な積極性こそ、不倫への適性、すなわち、才能だ。
 同じく、その才能に恵まれすぎているのが斉藤由貴である。彼女は2月に出演した『サンドの時代屋はじめました』(NHK総合)のなかで、アグネス・ラムのブームが紹介された際、こんな感想を語った。
「美しい女子の体っていうのは元気を与えるんだなって(笑)シンプルに思いますよね」
 これは生物として、健全な感覚だ。そして、社会的倫理には反するとされる不倫もまた、性の本能にとことん従った行動のひとつだったりする。生物的本能に忠実に生きれば、社会的に失格扱いされるとは、人間、特に現代人はなんと窮屈なことだろう。
 そのストレスを誰もが抱えているからこそ、我慢できない人は浮いてしまい、引きずり降ろされることに。それが好感度を誇る有名人ならなおさらだ。ベッキーも東出昌大も叩かれることで、本能を我慢している人たちにとってのストレス発散に寄与したといえる。
 もちろん、そこには勝ち組を負け組にできるという快感もある。たとえば、乙武洋匡の場合、障害を持ちながらそれをむしろ武器にしつつ、国政選挙に通りそうな高みにまで達しようとしていた。そのとき『週刊新潮』が不倫を報じたのだ。あれは弱者だと思っていた人が意外な強者でもあったことに、世間が気づかされた出来事でもあった。
 そんなストレス発散や快感を求める人たちのニーズにも対応するかたちで、不倫報道はエスカレート。もともと、近松門左衛門の時代から、不倫はメディアと世間が一緒になって盛り上げてきたが、ここ数年の勢いには目を見張らされる。いまや「不倫報道」がひとつの文化になりつつある印象だ。
 それこそ、渡部と佐々木、相方の児嶋一哉が示した三者三様の謝罪を比較研究してみたり、と、変にアカデミックなのである。
 そして、不倫をした有名人は活動自粛を強いられるのが当たり前になってきた。これは芸能、あるいは笑いといった伝統文化を、不倫報道という新たな文化が凌駕してしまったということかもしれない。
 ただ、その新文化は、有名人の活動を自粛させてまで味わう価値があるのだろうか。アンジャッシュ、あるいは渡部もそれなりに面白いのだし、不倫報道を楽しみつつ、同時に本業でも頑張れ、というわけにはいかないのだろうか。
 もちろん、主婦層を中心に、許せないという人も一定数いるだろう。が、あんたが不倫されたわけでもあるまいし、とか、人の恋路を邪魔するやつはなんとやら、とか、そんなことも言いたくなるのだ。
 とはいえ、不倫報道を楽しむ人がこれほど多くなってくると、そこに水を差すほうがかえって野暮だということにもなりかねない。どうやら、不倫報道は現代日本を象徴する「文化」として定着してきたようである。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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